突然の頻呼吸、食欲、元気消失を主訴に2歳のパグ犬が来院しました。
すぐにレントゲン検査、エコー検査、血液検査を実施しました。
レントゲンでは右の肺に境界明瞭な不透過性亢進領域(白い部分)がみられ
まず肺炎を疑いました。
しかし、レントゲンの白い部分にエアーブロンコグラム(空気の通り道)がみられません。エコーで右の肺をみてみると、含気していない肺と思われる構造物ががあり、この領域に空気、血流ともに認められませんでした。
以上の所見から肺葉捻転を強く疑いました。
肺葉捻転とは肺葉がその付け根で捻じれてしまい、血流(血管)と空気(気管支)が遮断されてしまう状態です。
ここで肺葉捻転52例をまとめた文献があったので紹介します。
この論文には、肺葉捻転の際の肺の外科的切除の成績はとても良く(92%が回復)、また肺葉捻転は基本的にアフガンハウンドなどの胸の深い犬種や胸水などの基礎疾患がある犬に多くみられるが、例外としてパグの頭側の肺に起きやすいという記載がありました。
これ読んで、特発性の肺葉捻転がパグ犬に起きやすいというのをはじめて知り、入院第4日目に右肺の外科的切除を実施しました。
切除した肺の断面です。肺は本来ピンクでフワフワなんですが、全く含気しておらず硬化し、まるで肝臓のようでした。
また胸水と肺葉の断面から細菌は検出されませんでした。
術後の回復は驚くほど早く、手術翌日から食事も食べれるようになり、今では元気いっぱいです。パグ犬の急性の呼吸器症状では、稀ですが肺葉捻転も鑑別診断として考えなければなりません。