犬皮膚組織球腫
2019年12月9日
1歳のダックスフンドのリク君、右前足の赤いドーム状のしこりを主訴に来院されました。
しこりに針を刺して細胞を採取すると下の写真の細胞が取れてきました。
卵型の細胞で核(紫色)がはしっこによっています。
これらの特徴から犬皮膚組織球腫と診断しました。
犬皮膚組織球腫は皮膚の良性病変で、自然になくなることが多いため
手術せず経過を観察することにしました。
皮膚のしこりは悪性のものもあるので、みつけたら一度細胞診断を受けることをおすすめします。
セキセイインコのマクロラブダス症
2019年11月30日
健康診断でセキセイインコの糞便検査をすると、写真のような細長い菌(真菌)がたびたびみられます。これがマクロラブダスです。
わかりにくいですが画像中央のぼやけたバットのような形をしたやつです。
無症状のことも多いのですが、胃炎をおこし、胃癌との関連性も示唆されています(人のピロリ菌が胃癌の発生に関与しているのに似ています)。
症状としては嘔吐、食欲不振、胃出血によって黒いタールのような便をしたり、胃の障害による消化不良でエサの粒がそのまま糞に出てきたりして、重症化すると亡くなることもあります。
このような便がみられたら、すぐに病院に来てください!
セキセイインコをおうちにお迎えしたときは、健康診断で糞便検査をしましょう。
フェレットの3大腫瘍 (副腎腫瘍)
2019年11月29日
今回はフェレットの3大腫瘍(インスリノーマ、リンパ腫、副腎腫瘍)のひとつの副腎腫瘍についてお話しします。
副腎は腎臓の頭側にある内分泌器官(ホルモンを分泌するところ)です。
中~高年齢のフェレットではこの副腎が腫瘍化して
性ステロイドホルモンが過剰に分泌され、さまざまな症状がでます。
わかりやすいのは全身性の脱毛で、痒みを伴う場合もあります。
他にも前立腺に膿がたまったり、筋肉量が低下したりします。
治療は内科療法(過剰なホルモンを抑える月に1回の注射)と、
外科療法(腫瘍化した副腎を摘出する手術)があります。
実際の手術の画像です。
写真中央のピンセットの先端にあるのが大きくなった左の副腎です。
副腎の近くには大きな血管あるので、電気メスや血管クリップを使用して摘出します。
動物の血圧測定
2019年11月28日
動物たちの血圧を測定することは、病気を診断治療するうえでとても重要です。
高血圧によって脳、心臓、腎臓、眼(網膜)など多臓器に悪影響がでますが、
あきらかな症状が出てくるのはかなり高血圧が悪化してからです。
当院では高齢の動物を中心に、定期的な血圧測定を推奨しております。
血圧測定はしっぽや、足に血圧のカフを巻き付けて測定します。
高血圧が診断された場合は、その原因(甲状腺機能亢進症、腎臓病など)を追究し、血圧をさげる薬や、食事療法で治療していきます。

後ろ足にカフを巻き付けて血圧測定しているところです。
リラックスした状態で測れるとよいのですが、ちょっと緊張しちゃってます。

何回か測定し、収縮期血圧(上の血圧)200を超える場合、高血圧と診断しています。
犬のアレルギー性皮膚炎
2019年11月22日
動物病院に皮膚疾患で来院するケースはとても多く、
なかでも治療に苦慮するのが犬のアレルギー性皮膚炎です。
寄生虫、細菌、カビ、ホルモン病などを除外して診断し、
基本的に治すというより、コントロールする病気になります。
内服薬、外用薬、シャンプーなどを組み合わせて治療していきますが
これからの季節大切なのが皮膚の保湿になります。
部屋の加湿、保湿剤の使用、そしてお勧めしたいのがルームウエアの着用です。
服を着ることで、アレルゲンとの接触を減らし、皮膚の保湿効果も期待できます。また物理的に引っ掻くことから皮膚を保護できるのも大きなメリットです。
各メーカーから皮膚病の子たち用に、いろいろな素材やサイズのルームウエアが販売されるようになっています。アレルギー性皮膚炎でお悩みの方は、一度治療に取り入れてみてはいかがでしょうか?
ミニチュアピンシャーさんも乾燥肌の子が多く、ルームウエアの着用は有用です。すごく似合ってますね。
デグーの病気
2019年11月16日
デグーの病気に関する情報はまだまた少ないのですが、
2011年に発表された文献をみつけたのでご紹介します。
動物病院に来院した300匹のデグーを、2歳以上2歳未満に分けて
どんな病気が多かったかを報告しています。
一番多かったのが歯のトラブルです。
全体で60パーセント、2歳以上では75.8パーセントと非常に高い有病率となっています。牧草中心の食生活で、臼歯の伸びすぎに注意しなければいけません。
次に多いのが皮膚の病気です。
有病率が全体で36パーセント、2歳未満で49パーセントとなっています。
皮膚トラブルのなかでも問題行動による抜毛(自分で抜いてしまう)や同居のデグーとのケンカが多くのを占め、病原体による皮膚疾患は少ないと報告しています。
目の病気、消化器病とつづき、繁殖期疾患が9.3パーセントという結果が目につきました。当院でも難産(胎児がお腹の中で亡くなってしまい娩出されない)で亡くなってしまったケースを経験しております。
お腹が大きくなっても生まれず、食欲不振や活動性の低下がある場合は、様子をみずに一度胎児の生存確認(超音波検査)をすることをお勧めします。
こちらの文献ですが、興味のある方は「Disease in pet dugus」で検索してみてください。
入院中に後ろ足の骨(脛骨)から点滴をしているデグーさんです。
血管の確保が難しい場合このような方法をとることもあります。
フレンチブルドッグの帝王切開
2019年11月15日
帝王切開で無事に産まれました!
フレンチブルドッグなどの犬種は頭が大きく、自然分娩が難しいので
帝王切開になるケースが多いです。元気に育って欲しいですね。
ハリネズミの消化管内異物
2019年11月11日
ハリネズミは嘔吐をすることがあまりない動物です。
吐くのが続いて元気がない場合、重篤な疾患であることがあるので注意が必要です。
内服で嘔吐の症状が改善せず、消化管内異物がみつかり手術に至ったケースを紹介します。
全身麻酔下エコー検査で腸管内に異物らしきものが認められました。
矢印の部分がエコービームが通らない異物が強く疑われるところです。
手術では固まった木製の敷材が摘出されました。
この後胃からも同様の異物が、みつかり摘出をしました。
術後は静脈点滴と経鼻カテーテルから栄養補給を行い、無事に回復しました。
ハリネズミに嘔吐がみられたときは様子をみずに一度来院することをお勧めします。詳しい検査には麻酔が必要になることをご理解ください。
ウサギの尿石症
2019年11月4日
気温が下がると動物たちの飲水量が減って、泌尿器疾患での来院が増加する傾向にあります。もともと尿中へのカルシウム排泄の多いウサギさんは尿石症や砂尿症になりやすく、これからの季節注意が必要です。対策として飲み水がいつでも十分飲める状態にあるか確認(給水ボトルがちゃんとでるかチェックなど)したり、飲む量を増やす工夫(猫では備前焼の器に水を入れるとよいそうなので、試してみても良いかと思います。)をしてみてください。あとはペレットフードをカルシウムを制限したものにするのもおすすめです。結石が出来てしまった場合、溶かすことができないので手術で摘出しなければいけません。とにかく予防が重要です。
実際に摘出した結石です。頻尿や血尿といった症状がなく結石が大きくなってから体調を崩してしまうケースもあるので、定期的な泌尿器の健診(レントゲン、エコー、血液検査、尿検査)も大切です。
カルシウムを制限したラビットフードの取り扱いも始めました。
サンプルもご用意できますので、スタッフまでお気軽にお申し付けください。