犬の臍ヘルニア
2020年2月4日
「ヘルニア」という言葉を耳にすることがあると思いますが
腰が痛いのがヘルニア?脱腸するのがヘルニア?とよくわからない方も多いのではないでしょうか?
「ヘルニア」というのは正常な場所から飛び出してしまうという意味です。
なので 椎間板ヘルニア→椎間板が飛び出して脊髄を圧迫する。
鼠径・臍・会陰ヘルニア→鼠径部・臍部・会陰部からお腹の中の臓器
(脂肪、腸、膀胱、前立腺、子宮など)が皮膚の下に飛び出してしまう。
とうことです。
今回の臍ヘルニアですが、比較的よくみられるもので、お腹の中の脂肪だけが皮膚の下に飛び出していることが多く、症状を示すことがあまりありません。
しかし、お腹に強い圧力がかかると腸が出てしまったり、脱出する脂肪の量が多くなると、根元の絞扼が強くなり壊死してしまうこともあります。
皮膚の下に脂肪が飛び出しかなり血液がうっ滞しています。
これをお腹の中にしまって、お腹の壁を丁寧に縫合していきます。
あとは皮下組織、皮膚を縫合したら手術終了です。
お臍や鼠径部にポコッと腫れがある場合は、ヘルニアの可能性があるので、
一度動物病院に相談してみてください。
ウサギの子宮疾患
2020年1月21日
メスのウサギは3~4歳を過ぎると子宮の病気になる確率が非常に高く
その発生頻度は50~80パーセントに達するという報告もあります。
そのなかでも子宮腺癌が多く、病気の予防目的で避妊手術をした無症状のウサギの子宮にすでに癌が存在したというケースも何例か経験しています。
予防策として若い年齢での卵巣子宮摘出(避妊手術)が推奨されますが、麻酔のリスクや術後の腸管運動の低下、肥満などのデメリットも考えなければいけません。
避妊手術をしていない女の子は、3~4歳を過ぎたら子宮の検査を年に1~2回は受けてください。
猫のひも状異物の誤食
2020年1月10日
異物を誤食して動物病院に来院されるケースはたびたびありますが、特に注意していただきたいのがひも状の異物です。
ひも状の異物は舌の付け根や胃の出口などに引っかかると、腸管がひもによってたぐり寄せられた状態になり、ひどいと穴があいてしまいます。
おしりからひも状の物が出ているときは絶対に無理やりひっぱてはいけません。
診断は問診、レントゲン、特徴的な超音波画像所見からおこないます。
治療は基本的に手術で異物を取り出すことになります。
エコー検査ではグニャグニャによじれた腸がみられます。
開腹してみると、腸が紐によってたぐり寄せられています。
摘出されたのはタコ糸でした。
猫たちはひも状の物を口にするのが大好きですので、
誤食しないように注意してあげてください。
ジャンガリアンハムスターの子宮蓄膿症
2019年12月30日
子宮蓄膿症は子宮への細菌感染でおこる病気で、ハムスターたちも時々この病気で来院します。
症状は膿がたまった子宮でお腹が張ってきたり、粘性の膿がおしりの周りについて汚れたりします。病気が進行しないと元気食欲はなくならないことが多いです。
治療は抗生物質とホルモン剤注射を組み合わせた内科治療と、卵巣子宮を摘出する外科治療に分かれます。
術中の子宮です。膿がたまって大きく膨らんでいます。
摘出した子宮と卵巣です。出血させないように電気メス、血管クリップを使用して摘出しています。
手術直後の様子です。術後は皮下点滴、抗菌薬投与をおこない酸素室で管理します。
もうちろんリスクを伴う手術ですが、このように回復してくれる子もいます。
お腹が張ってきた、おしりが汚れているときは、元気があるうちに動物病院を受診してください。
セキセイインコの甲状腺機能低下症
2019年12月24日
甲状腺ホルモンはおもに体の代謝にかかわるホルモンで、免疫や皮膚の恒常性の維持にも関与しています。
このホルモンが不足するのが甲状腺機能低下症で、高脂血症、脂肪肝、動脈硬化症などの病気が続発することがあります。
症状としてわかりやすいのが羽の色が変わることです。また綿のような毛が目立つようになるのも特徴です。
このセキセイインコさんはもともと水色の羽だったのですが、
黄色に変色し、白いフワフワの毛が目立つようになっています。
治療は主に甲状腺ホルモンの補充で、脂肪肝が疑われる場合はこれも治療していきます。
昔と羽の色が変わってきた、毛づやがなくなってきたなどの変化がみられたときは、元気食欲があっても一度病院を受診されてください。
乳歯の遺残
2019年12月14日
乳歯の遺残(残存)は永久歯が生えきったにもかかわらず、乳歯が抜けずに残ってしまう状態で、特に小型犬種(チワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリアなど)の子たちによくみられます。
本来永久歯が乳歯の根っこを溶かしながら生えてくるのですが、それがずれてしまうと根っこが溶けずに残ってしまいます。
すぐに悪影響がでることはありませんが、乳歯と永久歯の間に食べカスなどが挟まりやすく、歯並びも悪くなるので抜歯が推奨されます。
処置は全身麻酔下で行います。(抜歯前)
(抜歯後)
抜歯した乳歯です。根っこがしっかり残っています。
乳歯が抜けない場合は、ご相談ください。
犬皮膚組織球腫
2019年12月9日
1歳のダックスフンドのリク君、右前足の赤いドーム状のしこりを主訴に来院されました。
しこりに針を刺して細胞を採取すると下の写真の細胞が取れてきました。
卵型の細胞で核(紫色)がはしっこによっています。
これらの特徴から犬皮膚組織球腫と診断しました。
犬皮膚組織球腫は皮膚の良性病変で、自然になくなることが多いため
手術せず経過を観察することにしました。
皮膚のしこりは悪性のものもあるので、みつけたら一度細胞診断を受けることをおすすめします。
セキセイインコのマクロラブダス症
2019年11月30日
健康診断でセキセイインコの糞便検査をすると、写真のような細長い菌(真菌)がたびたびみられます。これがマクロラブダスです。
わかりにくいですが画像中央のぼやけたバットのような形をしたやつです。
無症状のことも多いのですが、胃炎をおこし、胃癌との関連性も示唆されています(人のピロリ菌が胃癌の発生に関与しているのに似ています)。
症状としては嘔吐、食欲不振、胃出血によって黒いタールのような便をしたり、胃の障害による消化不良でエサの粒がそのまま糞に出てきたりして、重症化すると亡くなることもあります。
このような便がみられたら、すぐに病院に来てください!
セキセイインコをおうちにお迎えしたときは、健康診断で糞便検査をしましょう。
フェレットの3大腫瘍 (副腎腫瘍)
2019年11月29日
今回はフェレットの3大腫瘍(インスリノーマ、リンパ腫、副腎腫瘍)のひとつの副腎腫瘍についてお話しします。
副腎は腎臓の頭側にある内分泌器官(ホルモンを分泌するところ)です。
中~高年齢のフェレットではこの副腎が腫瘍化して
性ステロイドホルモンが過剰に分泌され、さまざまな症状がでます。
わかりやすいのは全身性の脱毛で、痒みを伴う場合もあります。
他にも前立腺に膿がたまったり、筋肉量が低下したりします。
治療は内科療法(過剰なホルモンを抑える月に1回の注射)と、
外科療法(腫瘍化した副腎を摘出する手術)があります。
実際の手術の画像です。
写真中央のピンセットの先端にあるのが大きくなった左の副腎です。
副腎の近くには大きな血管あるので、電気メスや血管クリップを使用して摘出します。
動物の血圧測定
2019年11月28日
動物たちの血圧を測定することは、病気を診断治療するうえでとても重要です。
高血圧によって脳、心臓、腎臓、眼(網膜)など多臓器に悪影響がでますが、
あきらかな症状が出てくるのはかなり高血圧が悪化してからです。
当院では高齢の動物を中心に、定期的な血圧測定を推奨しております。
血圧測定はしっぽや、足に血圧のカフを巻き付けて測定します。
高血圧が診断された場合は、その原因(甲状腺機能亢進症、腎臓病など)を追究し、血圧をさげる薬や、食事療法で治療していきます。

後ろ足にカフを巻き付けて血圧測定しているところです。
リラックスした状態で測れるとよいのですが、ちょっと緊張しちゃってます。

何回か測定し、収縮期血圧(上の血圧)200を超える場合、高血圧と診断しています。