フレンチブルドッグの皺襞皮膚炎
2020年7月28日
おしりを痒がってこすりつけることを主訴にフレンチブルドッグさんが来院しました。この子は生まれつき尻尾が変形し、皮膚にめり込むような形になっていました。
この尻尾と皮膚の間で皮膚炎が起こっており、外用薬や洗浄ではなかなかなおらず経過していました。
こういった場合皮膚のヒダになっている部分を切除するという選択肢があります。今回は変形した尾骨の先端と余った皮膚を切除しました。
1週間後の術部の写真です。炎症も消失し、おしりをこすりつける行為もなくなり飼い主さんも大変喜ばれていました。
物理的な構造が皮膚炎の原因になっている場合、手術という選択肢もあるのを知っていただければと思います。
パグの肺葉捻転
2020年6月5日
突然の頻呼吸、食欲、元気消失を主訴に2歳のパグ犬が来院しました。
すぐにレントゲン検査、エコー検査、血液検査を実施しました。
レントゲンでは右の肺に境界明瞭な不透過性亢進領域(白い部分)がみられ
まず肺炎を疑いました。
しかし、レントゲンの白い部分にエアーブロンコグラム(空気の通り道)がみられません。エコーで右の肺をみてみると、含気していない肺と思われる構造物ががあり、この領域に空気、血流ともに認められませんでした。
以上の所見から肺葉捻転を強く疑いました。
肺葉捻転とは肺葉がその付け根で捻じれてしまい、血流(血管)と空気(気管支)が遮断されてしまう状態です。
ここで肺葉捻転52例をまとめた文献があったので紹介します。
この論文には、肺葉捻転の際の肺の外科的切除の成績はとても良く(92%が回復)、また肺葉捻転は基本的にアフガンハウンドなどの胸の深い犬種や胸水などの基礎疾患がある犬に多くみられるが、例外としてパグの頭側の肺に起きやすいという記載がありました。
これ読んで、特発性の肺葉捻転がパグ犬に起きやすいというのをはじめて知り、入院第4日目に右肺の外科的切除を実施しました。
切除した肺の断面です。肺は本来ピンクでフワフワなんですが、全く含気しておらず硬化し、まるで肝臓のようでした。
また胸水と肺葉の断面から細菌は検出されませんでした。
術後の回復は驚くほど早く、手術翌日から食事も食べれるようになり、今では元気いっぱいです。パグ犬の急性の呼吸器症状では、稀ですが肺葉捻転も鑑別診断として考えなければなりません。
マスクが届きました
2020年6月3日
本日病院のポストをみてみるとマスクが届いていました。
緊急事態宣が解除され、気持ちのゆるみがちなこの時期に届いてくれたのはかえって良かったかなと思います。
当院でも引き続きコロナウィルスの感染拡大防止のため、マスクの着用に協力をお願いいたします。
ハリネズミの消化管型リンパ腫
2020年5月12日
リンパ腫はハリネズミで比較的よく遭遇する疾患で、リンパ節や血液などに存在するリンパ球が腫瘍化して過剰増殖する病気です。
症状は発生する場所によってさまざまで、体表のリンパ節が大きなることもあれば、今回のようにお腹の中のリンパ節が大きくなり、下痢や食欲不振の症状を呈することもあります。
超音波検査の所見です。脾臓の尾側に腫瘤(しこり)ができています。
血管の周りのリンパ節もかなり大きく腫大しています。
リンパ腫は完治することが難しく治療は、抗癌剤の投与、ステロイド剤の投与、支持療法として胃腸薬や抗生物質などの投与に限られます。
下痢や嘔吐が続き脱水症状になってしまうことも多く、写真の子は点滴、投薬のために静脈確保をおこなったところです。
ハリネズミさんに限らずですが、何か気になる症状がある場合は様子をみないで早めに受診されてください。
猫の門脈シャント
2020年4月24日
腸から栄養や毒素を吸収した血液は門脈という血管に吸い上げられ、肝臓に到達し栄養の分解・合成や解毒などの処理がなされます。
この門脈が奇形血管で後大静脈や奇静脈とつながってしまうのが、今回の病気(門脈シャント)です。
栄養が肝臓に十分いかないので、肝臓が発育せず機能が下がったり、解毒されないアンモニアなどが全身の循環に回ってしまい体調不良をきたします。
今回の子も肝性脳症といわれる症状(特に食後に元気がなくぼーっとしてよだれを垂らしている。)で来院しました。
鎮静下エコー検査でシャント血管のおおよそ位置を特定することができました。
治療は単純で奇形血管をしばって止めてしまえばおしまいなのですが、しばったことで門脈の圧力が上がり過ぎてしまうと腸や膵臓が壊死してしまったり、術後に発作が起きたりするので注意が必要です。
今回のケースも仮遮断時に門脈血管が腫れあがり、腸と膵臓がみるみる青紫色に変色したため完全結紮はあきらめて、セロファンバインディングという手法で少しずつ血管を締め付けていくことにしました。
幸い無事に手術が終わり、術後の発作もなく、1か月後の血液検査でアンモニアの数字も正常化してくれました。
1か月後の様子です。投薬の必要も食事の制限もなく元気に過ごせています。
この子に手術の機会を与えてくださり、手術費用を負担してくださったブリーダーさんと術後に快く里親になってくださった飼い主さんに感謝いたします。
犬の糖尿病
2020年4月15日
糖尿病は代表的な内分泌疾患で、インスリンが枯渇するため細胞が糖を利用できず血糖値が上がってしまう病気です。基本的にインスリンを注射して、血糖値を正常に近づけるのが治療になります。
このときインスリンの種類や適正量を決定するため、インスリン注射後の血糖値測定が頻回必要になります。場合によっては入院して血糖値を何度も採血で測ることがあります。
この負担を減らすためフリースタイルリブレを導入しました。
針のついたセンサーを体につけて、針から吸い上げられた体液から血糖値を読み取ることができます。
センサーは脱落しなければ、2週間血糖値を測り続けることができます。
ボタンをおしてかざすだけで血糖値が表示され、データが蓄積されます。
すごく便利ですし、入院せずおうちに帰って測定できるのがなによりのメリットです。
デメリットとしては、センサーの費用が掛かることや途中で脱落してしまうと
再度装着することができないこと、装着した部分の皮膚が荒れてしまうことなどがあります。
近年獣医医療においても導入されてきているフリースタイルリブレは、非常に有用だと感じました。
犬の消化管内異物に伴う腸重積
2020年3月26日
動物たちが異物を食べてしまい、胃の出口や腸につまってしまうことはしばしばみられます。
今回のダックスさんも元気食欲がないことを主訴に来院し、胃から腸に異物の閉塞がみられました。
超音波でお腹をみたところ異物とともに腸重積がみられました。
腸重積とは腸に腸が覆いかぶさってしまう状態で、時間がたつと血行不良から腸が壊死してしまうので、緊急手術となりました。
重積を解除し、異物(タオル片)を取り出しました。
幸い重積したところは壊死がみられず、3日ほどで食欲が戻り
退院することができました。
犬は布切れや紐を特に好んで口にしてしまうので注意してください。
新型コロナウイルスについて
2020年3月11日
以前飼い主さんから「新型コロナウイルスって犬にうつるの?」
と質問された際に、「今のところ大丈夫だと思いますよ、かかりません。」
とお答えしていました。
しかし症状はないものの犬から弱陽性反応が出たという報告がされました。
安易な返答であったと反省しております。
犬から人にうつることや、犬から犬にうつることは現時点で報告されていないので、過剰に怖がる必要はありませんが、今後の情報には注意しなければいけません。
愛知県獣医師会のホームページでもあたらしい情報があれば更新されますので
参考にされてください。
チンチラの健康診断
2020年2月15日
スタッフが飼育しているチンチラのグレちゃん、シナちゃんの健康チェックをしました。
他の動物たちと同じく視診、聴診、触診、レントゲン、エコー、血液検査を
実施しました。この子たちは麻酔や鎮静処置はしていませんが、必要になることもあります。
頭部のレントゲンです。歯の伸びすぎや噛み合わせをチェックしていきます。
しっかり牧草を食べているので問題ないですね。
腎臓のエコー検査です。形大きさ問題ありません。
副腎もオッケーです。
血液検査も大丈夫でした。二人ともお疲れさまでした。
チンチラたちの定期的な健康診断を希望される方はご相談ください。